再会
「今、揃ってないのは、大野くらいっスね。あとからアタシが……あ」
芽美が気を利かせようとしたとき、ファミレスの窓の外を二人の女子高生が通りかかった。
「大野さん、それに山口さんも久しぶり」
二人のうち一人は大野さんで、もう一人は山口さんだった。
あまりの大所帯に、店員が気を利かせて角の大型席に移る。
「ご無沙汰してます、お兄さん。ぐうぜん大野とばったり会って、話しながら歩いてたら、ファミレスの窓で芽美が暴れてるのが目に入って」
山口さんは、ボクのネット漫画雑誌で、ファンタジー世界が舞台の株や不動産取引の漫画を描いていて、一定のファン層を獲得していた。
けれども今年の夏、受験勉強を理由にペンを置いたのだ。
「どう、山口さん。受験勉強は順調?」
「ええ、まあそれなりに。あ、あとコレ、漫画のデータなんですが……」
「え? 山口は、漫画辞めたんじゃ無かったっすか?」
「そうなんだケド、受験勉強の合間に描けたから、持ってきたのよ」
「成績もバッチシなのに、余裕っすねえ?」
「いや、芽美……お前の方はどうなんだ?」
「え、アタシはっスねえ? 相変わらず、低空飛行を続けてるっス」
「お前も来年は受験生なんだから……」
「いや、前にも言ったっスけど、あたしの目標は漫画家一本っス!」
「勉強がしたくないだけだろ?」
「んー、前はそうだったんスけどね。漫画家と言えど、勉強は必要かと思って最近は、授業は真面目に聞いてるっスよ」
「前は?」「ノートや教科書に落書き……漫画の練習っス!」
まあボクも、人のコトは言える状況でも無かった。
「有難う、山口さん。前に貰った三話分も、今月で終わりだから寂しいと思ってたんだよ。ファンも、嘆いてたしな」
「わたしの漫画、絵よりも文字が多いから、またお兄さんには手数をかけるわ」
「いいよ、そんなコト。オレの仕事なんだからさ」
「ええ、有難う」
山口さんは、頬をうっすらと紅く染めた。
「でも、来月まで延命されたとはいえ、これで最終回なんスね」
芽美は、漫画データが入っているであろう、SDカードを眺めしんみりしていた。
「え? 三話分よ、それ」
「へ?」「さ、三話分!?」
その場にいたみんなが、閉口した。
「超人っっスね!!」
「どうしてそんなコトが、出来ちゃうかな?」
「勉強の合間の時間を利用して、息抜きに描いただけよ。それより、この集まりは何?」
「それはっスね。みんなでスノボ合宿をしようという話になったっス!」
「山口さんも、良ければ来ない?」「ええ……そうね」
ボクの誘いに、山口さんは顔を縦に振った。