二度目のコンビニから帰ったボクは、スキャナーで原稿のコピーをパソコンに取り込んだ。
「よし。ペイントソフトに、ちゃんと取り込めたぞ」
「ちゃんと、グレースケールで取り込んだっスか?」「ああ、抜かり無い」
ペイントソフトでの漫画の取り込み方は、原田妹の友達の一人で、パソコンに詳しい萩原さんに教わっておいた。
「この画像に、ゴミ取りと補正をかけるんだな?」
取り込んだ原稿は、ペイントソフトのルーペ機能で拡大すると、ホコリやら消しゴムのカスやらの、無数のゴミが浮かんでいた。
「そうっス。間違って、いる線まで消しちゃわないようにっス」
「そ、そうだな。ゴミ取りは地味にやるしかないよな?」
「先に、レベル補正かけた方がいいよ。細かいゴミは消えちゃうから」
萩原さんが指摘した。
「なる程、そういうモノなのか?」
ボクは言われた通り、レベル補正の範囲を指定する。
「こ、こんなモンか?」「どれっス?」
原田妹が、ボクの膝の上に転がりこんできた。
「んー、もちょっと、このヘンの線が出てた方がいいっスかねえ?」
「こんな感じ?」「そそ、そんな感じっス」
原田妹は納得すると、自分の席に帰って行った。
「ゴミは大体取れたな」「次は文字入れだね」「今度はドロー系のソフトか」
イラストの作成や編集を行うソフトは、大きくペイント系とドロー系に別れていた。
「ドロー系のソフトの特徴は、イラストをドット単位ではなく計算式で描いてる点ですね」
萩原さんの説明は、とても解りやすかった。
「つまり、拡大しても画像が荒れないんだよね?」「そうっス」
萩原さんの代わりに、原田妹が返事をした。
ボクはペイント系のソフトで、ゴミ取りとレベル補正を終えた画像ファイルを、ドロー系のソフトで開いた。
「クッ、なんかドロー系のソフトって慣れないよな。ベクターレイヤーだの、ベジエ曲線だの、なかなか思うようには」「そんなの使わないから、大丈夫だよ。漫画に文字を入れるだけなんだから」
萩原さんはパソコンの指導員の様に、ボクの隣で細かく説明をしてくれた。
向こうで原田妹が、何故だかムクれてる様にも見える。
「フォントは、ネットオークションで買った、フォント集に入ってるのを使うんだよな?」「コミックフォントってやつね。これですよ」「有難う」
ちなみに萩原さんは、四人の中で一番可愛いと思えた。
「でも前来た時、ボクのパソコンに入ってる動画を、拡張子で検索をかけて白日の下に晒したのも、萩原さんだったりするんだよなあ」
黒歴史を思い出してしまったボクは、フォント入れ作業に集中した。