企業漫画が読まれないワケと、企業が活用すべき漫画の新たなスタイルを提示

エイチ・ヒノモトの企業漫画とラノベのブログ

報酬も無いのに、ネットで漫画を1000ページ以上描いた男が、企業漫画のコンサルティングをしながら、ブログでライトノベルを連載してみた。

漫画好きなニートが、自らネット漫画雑誌を立ち上げてみた。(仮想)082話

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見せのコマと抜きのコマ


「オー、これで完成ですか?」グンナーさんが、質問してきた。

 

「いえ。今は市川さんが描いた原稿を取り込んで、それに大きさとパースを合わせただけですね」

デジタル処理でハメ込むといっても、簡単では無いのだ。

 

 「これから、微調整をします。この場面は、ライバルの起業家大学生の、初登場シーンですからね。ここでいかに見せれるかが、勝負です」

「な、なる程……」

 

「この大コマは、連続写真の一枚を切り取った感じで、あえて動きを出さずに止まった感じでいこうかと思ってます」

市川さんが言った。

 

「そうだね。その方が、キャラクターのインパクト出て、企業のロゴも見せられる」

 「質問デース。小さいコマも、写真を取り込んで入れるんデースか?」

 

「いいえ、そこは、テキトーでいいんです」

「テ、テキトー!? そんなのダメでーす!」

 

「言い方が、悪かったかな? テキトーじゃなきゃ、ダメなんです」

「テキトーじゃなきゃ、ダメ!?」

 

「はい。漫画は流れで読むモノです。見せのコマで丁寧に描かれたモノは、その後の小さなコマの雑な絵でも、読者は同じクオリティだと認識してしまうんです」

市川さんが、説明してくれた。

 

「認識させるって、言った方がいいかな。それに小さなコマまで描き込むと、画面がうるさくなってしまう。だからプロの漫画家でも、小さなコマは線を減らしたり、ディフォルメしたキャラを使う場合が多いんです」

 

「そーでしたか。奥がフカーイのですね、漫画とは」

グンナーさんは、少しは納得した様子だった。

 

「よかったら、作画やトーン張り作業も、見て行ってください」

「それでは、遠慮なくそうさせマース」

 

大柄なスウェーデン人は、大きな体で萩原さんの部屋を歩き回る。

「こ、これ全部、手で描いてマ~スか?」「はい」「キャラも背景も?」

 

「そうですよ。ホントは、グンナーさんのスノボも、手書きで描かなきゃなんですケド、時間がなくて」

市川さんが、申し訳なさそうに言った。

 

「ちょっと、わたしにも、描かせてくださーい」

グンナーさんは、好奇心を抑えられない人だった。

 

「それじゃ練習用の原稿に、このキャラクターを描いてみて」

山口さんが、道具一式をグンナーさんに手渡す。

 

「わかーりました。このコを描くのーですね?」

グンナーさんはGペンを握るが、線もヨレヨレでキャラも似てなかった。

 

「こ、これ、メチャクチャたいへんじゃ無いデ~スか!?」

「漫画って、読むのは一瞬でも、描くのはメチャクチャ手間がかかるんですよ」

 

ボクは、ネット漫画雑誌を始めた、最初の頃の自分を思い出していた。