企業漫画が読まれないワケと、企業が活用すべき漫画の新たなスタイルを提示

エイチ・ヒノモトの企業漫画とラノベのブログ

報酬も無いのに、ネットで漫画を1000ページ以上描いた男が、企業漫画のコンサルティングをしながら、ブログでライトノベルを連載してみた。

漫画好きなニートが、自らネット漫画雑誌を立ち上げてみた。(仮想)113話

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アポイントメント

その後、しばらく固まっていた佐藤は、池田さんを送りながら帰って行った。

 

「あの二人……案外上手く行くかも知れないな」

ボクは、夕暮れが迫る秋の空を、眺めながら思った。

「佐藤が尻に敷かれるのは明白だケド」

 

次の日、ボクのスマホが鳴り響いたかと思うと、アパートのドアがドンドンと叩かれる。

「なんだ、こんな朝っぱらから……非常識にも程があるぞ……」

 

スマホの相手と、ドアを叩く人物は同一人物である。

「あのなー、森兼 明人。今、何時だと思ってんだ!?」

 

ドアを開けると、ジャージ姿のカネちーが立ってた。

「なんだ? アポなら取ったぞ?」

「本人のアパートの前で、さっさと出ろとメールを打つのは、アポとは言わん!」

 

夜吸さんから、散々非常識なヤツとは聞かされていたし、実際にボクも会って解ってはいたが、やはり森兼 明人は非常識だった。

 

「で、なんのようだ?」

「オレは、漫画……絵は描ける。だが、ストーリーがな……あまり描けん」

用件は、凄まじくシンプルだった。

 

「つまり、ネームを見ろと?」「そうだ」

ボクは、カネちーをアパートに入れた。

 

「なんだ、引き籠りのオレと、変わらない部屋じゃないか? もっとこう、お洒落な感じをイメージしていたのだがな?」

カネちーは言った。

 

「美少女フィギュアが飾ってあって、パソコンが無駄にたくさんある……ま、つまりオレも、最近までニートだったんだわ」

 

「そ、そうなのか? その割りには、社会常識はしっかりしてるな?」

「社会常識が、欠落してるのは解かってるんだな、カネちー」

 

ボクは、トーストにパンを二枚セットし、棚からコーヒーカップを取り出し、お湯を注いだ。

 

「お前、料理もできるんだな? このパン、旨いぞ!」

「これを料理と呼ぶかは、置いておくとして、ネームはどんな感じだ?」

 

「まあ、こんな感じ?」

ボクの部屋を見て警戒心を緩めたのか、あっさりとネームを渡された。

 

「いやあ、何というか……こんな芸術チックなネーム、初めて見たわ」

それは本当の意味で、絵が上手い人間の作画だった。

 

「なる程……確かにキャラも個性的だし、背景も描けてるが……」

「何かが、欠けている……一体、何が足りない?」

 

ボクも直ぐには答えが見つからず、ネームを何枚かめくって考える。

「そうだなあ……間……かな?」

 

「間……だと?」

カネちーは、パンをかじりながら言った。

 

「このネームは、溢れ出さんばかりの洪水のような勢いがある……半面、全てがそれで埋め尽くされていて、休める間が無い……」

ボクは、偉そうに言った。

 

正直、正解なのかは解らないが、感じたありのままを伝える。

「ここまでエネルギッシュな作品は、早々無い。だが、エネルギーってのは……」

 

「し……素人風情が!! お、お前に、何が解る!!?」

 

カネちーは、喰いかけのパンを口いっぱいに積め、コーヒーで流し込むと、アパートを跳び出だして行った。