2019-01-01から1年間の記事一覧
コスパ最強・カロリーMAX 「まったく……これは、追い駆けなければならんのだろうか?」 ボクは頭に疑問を浮かべながらも、ドアにカギをかけてカネちーを追った。 「ゼハー、ゼハー、ゼハー、ゲホッ!!」 カネちーは、アパートから100メートルほどの、ゴミ…
アポイントメント その後、しばらく固まっていた佐藤は、池田さんを送りながら帰って行った。 「あの二人……案外上手く行くかも知れないな」 ボクは、夕暮れが迫る秋の空を、眺めながら思った。 「佐藤が尻に敷かれるのは明白だケド」 次の日、ボクのスマホが…
新キャラ 「とりあえず佐藤のサッカー漫画も、新キャラの登場で数話は持ちそうだな」 アパートの薄汚れた畳の上で、ボクは言った。 「だがな。ネームの段階ならもう一人くらい、新キャラをストックしておきたいところなんだ」 相変わらず、不安症の佐藤が反…
「オレのサッカー漫画は、主人公の少年が自分のクラブチームに、色んなキャラをスカウトしてくるのも売りの一つだ」 佐藤は言った。 カリスマ美容師ドリブラー 「つまり、どれだけ個性的なキャラを仲間に加えられるかが、かなり重要になってくる。いずれは自…
池田さん 「とりあえず今度の打ち合わせは、オレも行こうか?」 「あ、ああ。だが池田さんに、ヘンな視線は向けるなよ?」 「いやー、別に無理にとは……」「スマン、来てくれ!」 「わかった、行くよ行くよ」 打ち合わせは、三日後の土曜日だった。 待ち合わ…
女子高生の理想 レンジで暖めていたパスタが六分半が経過し、でき上がりのベルが鳴った。 ……と同時に、玄関のチャイムも鳴る。 「なんだ? 芽美のヤツ、またスマホでも忘れていったか?」 アパートの古びた扉を開けると、そこには真面目そうなメガネが立って…
絵の説得力 「大野さんの漫画、メチャクチャ好調だな。これなら、山口さんの抜けた穴を埋められえる」 山口さんの、異世界ファンタジーと株や不動産投資を織り交ぜた漫画は、一定の読者層から評価を得ていた。 けれども大野さんの、猫カフェの看板娘姉妹の漫…
言い訳 「もう! なんであんなヤツと契約するんスか!!?」 ボクの小さな彼女は、ズーっと隣で騒いでる。 「だよなあ。あの性格のままだったら、相当ヤバいよなあ」 「だ、だったら……!?」 「でも、あれだけの『言い訳』ができるんだ。面白そうだと思って…
差別主義者 「大体お前さあ。サッカーも知らないで、サッカー漫画描くなっつーの。サッカーがまだ浸透してなかった、むかーしの時代ならともかく、今の時代にあれじゃ炎上してとーぜんだろ!?」 「ムッキー。言わせておけばっス!? 自分はどうなんスか? …
カネちー 「テメー、なに勝手に人の部屋入ってんだ!?」 乱暴なモノ言いの男が、部屋にいた。 仕方なく男の部屋へと入り、コンビニで買ったコーラとポテチを広げる。 「聞いてんのか、オラ!? だから、なに人の部屋入ってんだよ!? 夜吸から連絡あったケ…
森兼 明人 「その漫画家って、誰なんですか?」 ボクは夜吸さんに質問する。 「前言ってなかったけか? オレが漫画の依頼を受けて、締め切りどころか全然描けずに逃げ出したヤツのコト」 「ああ、その話の人ですか」 「いややいやいやいや、なにしれっと進め…
青春の思い出 夜吸さんのいきなりの一言に、ボクも芽美も大野さんも仰天する。 「まあ、これから乃梨の両親に会うワケだ。そこが難問なんだが……」 「こんなチャランポランな男に、大事な娘を渡せないったヤツっすか?」 「うるせえよ、ちびっ子!!」「やっ…
著作権 「やはり作画は、お前が一番早いな」 ボクは、芽美が描いたアニメのキャラを眺める。 「萩原や山口も、今でこそキャラも描いてるっスけどね。一年のときは、先輩のアシでキャラ描いてたの、アタシくらいっスから」 「確か芽美って、市川さんと同じ中…
猫カフェ漫画 山口さんが、ボクのネット漫画雑誌を去ってから、一週間が経過した。 「ど、どうでしょうか、お兄さん?」 ファミレスの席から身を乗り出して、迫る大野さん。 「うん。キャラはカワイイし、背景も頑張ったね。話もほのぼのとして、温かみがあ…
卒業 「ええ!? 山口、漫画辞めちゃうの!?」 大野さんは、親友の言葉に驚きを隠せない。 「そうね、もう高校二年の二学期だし、来年は大学受験だからね……」 山口さんは少し寂しそうにしながらも、ドリンクに手を伸ばす。 「そっか、やっぱ原因はお兄さん…
猫カフェ 芽美が、ネット漫画雑誌を始める男のマンガのネームを描き……。 今井さんが、繁華街のアーケードを見降ろしながら、自身の生み出そうとする作品に、新たなインスピレーションを得ていた頃……。 「大野……アンタも漫画描いてるの?」 「そ、そうだよ。…
アーケードの上 「できる男とは思ってないケド、ヴァンパイア探偵は高校時代から温めていた作品なんだよ」 ボクは言った。 「そうでしたか……構想の積み重ねからして違うと?」 今井さんが、仰々しく返す。 「いや、そんな偉そうなモンじゃないよ。本屋で推理…
推理モノの描き方 ボクは繁華街の電気店で、二人の女子高生がレジに並んでいるのを見かけた。 ボクが原作の『ヴァンパイア探偵』を描いてくれている萩原さんと、そのアシスタントをやってくれている後輩の今井さんだ。 「あ、萩原さんたちも来てたんだ。さっ…
第十世代CPU 「そういえば今井さんって、漫研入ったの六月だったよね?」 わたしは、隣を歩く後輩に質問する。 「そうですね、自分は漫研って原田先パイみたいな人が、同人っぽい作品描いてるイメージしか無くて、ちょっと敬遠してたんですよね」 「まあ…
探偵モノ 「でも、背景にデジタル素材を使えるとなると、作業が一気に楽になりますよね?」 今井さんが言った。 「そうだね、背景ってマジで描くの、時間がかかるからなあ」 「それに、上手く描けませんしね……」「確かにね」 休息を終えたわたしは、スマホで…
後輩は探偵? 今日、わたしのマンションに来てるのは、後輩の今井さんだけだった。 「萩原先パイ、背景上がりました」 「早いね、今井さん? ビルとか描くの、大変だったんじゃない?」 「それがですね。この間、社長に教えて貰ったテクニックを使ってみまし…
漫画の原動力 「オイ、入るぞ。お茶持ってき……」 「……ッ!!?」 次の瞬間、アタシの脚は兄貴のミゾ落ちにめり込んでいた。 「グハァッ!? ……な、なんで……お前が買って来いって……!?」 辺りに、コンビニの袋から飛び出した、ジュースやポテチが散乱する。 …
腐ってやがる…… 「けっきょく、漫画を描くのに漫画から離れて、一から何かを始めるってのは、どうかと思ったっス」 アタシは、自宅の自室に呼んだ鷹詞に、恐る恐る言ってみた。 「アタシが一番詳しいのは漫画っス。なら、漫画の世界について描けば、いいんじ…
漫画家の苦悩 「漫画以外って言っても、なにするっスかねぇ?」 アタシは、とりあえず腕を組んで考えてみる。 とりあえず、家の本棚にある本を読んでみる。 「アッハッハッハ、この漫画やっぱ面白いっスねえ」 面白い漫画は、何度読んでも面白いと思った。 …
残暑を乗り切るハンバーグ 海から帰ると、再び忙しい日々が待っていた。 芽美と付き合い始めたボクはファミレスで、彼女の新たな連載を共に考える。 「どんなのが良いっスかねえ、鷹詞?」 「なにか、ため込んであるアイデアとか無いのか?」 「あるにはある…
夏の海 太陽がギラギラと輝き、波の音が囁き潮風が香る。 可愛らしい水着や、魅惑的なビキニを着た少女たちが、波間に戯れた。 「お前んトコの地味な女子高生たちも、水着を着せるとまあ絵になるな」 ビーチパラソルの下で、チェアに寝転がった夜吸さんが言…
入院 次の日、ボクは熱を出して倒れ、病院に担ぎ込まれる。 救急車は、芽美が呼んでくれた。 「まったく、ただの風邪と過労なのに、倒れ方が大袈裟なんスよ!」 「面目ない……」 芽美が不器用に剥いてくれたリンゴをかじっていると、夏休み中の女子高生たちが…
続けられなかった漫画 「芽美……お前、こんなところで、何やってんだ……」 夜の雨はまだ降っていたが、ボクの心は安堵感に満ちていた。 「お兄さんを、待ってたんスよ……」 芽美は、言った。 「そっか……ゴメンな。話をちゃんと聞いてやれなくて」 ボクはビショ…
夜の雨 「芽美は……ボクが、プレッシャーに押しつぶされて、ネット漫画雑誌から逃げ出したときも、こんなボクをビジネスホテルまで迎えに来てくれた……」 ボクは電車に乗って、ビジネスホテルに向かった。 受付やロビーも探し、自分が泊った部屋を見せてもらっ…
いつものコンビニの、いつもの入店音が鳴り、自動ドアが開く。 芽美の行方 「芽美……こんなところには、居ないか?」 いつも偶然か必然か、誰かと出会うフードコートに向かう。 「おう、どうした? 写真の使用はOK貰えたか?」 居たのは、夜吸さんだった。 「…